最初に: 使われない原因は、知られていないことより「使い始められないこと」が多い
新機能を出したのに使われないとき、真っ先に出やすい反応は もっと告知しよう です。
リリースノート、メール、バナー、SNS、ポップアップを増やしたくなります。
もちろん、まったく知られていないなら告知は必要です。
でも実際には、見た のに 使わない、あるいは 存在は知っている のに あとで触ろうと思ってそのまま終わる ケースがかなり多いです。
新機能が使われない理由は、単に告知回数が足りないからではありません。
多くの場合は、次のどこかで止まっています。
- 必要な場面で機能が見つからない
- 使う前の設定が多く、最初の一歩が重い
- 誰向けの機能か分からない
- 使うと何が良くなるかが画面上で伝わらない
- 一度見逃すと、あとで再発見しにくい
つまり、問題は お知らせの量 ではなく、導線の設計 にあることが多いです。
この記事では、2026年4月25日時点で Intercom、Appcues、Pendo、Nielsen Norman Group の公開情報を確認しながら、新機能が使われない構造と、告知より先に見直したい導線設計の考え方を整理します。
告知を増やしても使われないのはなぜか
1. 告知は見た瞬間にしか効かない
メールやバナーは、見たその場で動かなければ流れやすいです。
特に SaaS では、ユーザーが今やりたい作業と新機能の文脈がずれていると、今は関係ない で終わりやすくなります。
たとえば、レポート機能の改善をトップ画面で告知しても、実際にその価値を感じるのはレポート画面に来たときかもしれません。
請求管理の新機能を、請求担当ではない人に一斉表示しても、ほとんど刺さりません。
Intercom の Product Tours や Appcues の機能案内も、単に出せばよいのではなく、誰に どのページで どのタイミングで 見せるかが重要だと整理されています。
ここがずれると、告知は届いても採用されません。
2. 機能の価値が抽象的だと、試す理由にならない
新しい分析機能を追加しました と言われても、それだけでは動きにくいです。
ユーザーが知りたいのは、機能名ではなく 自分の作業が何分短くなるか 今まで面倒だった何が減るか です。
使われる新機能は、説明が短くても具体的です。
- この確認作業が 3 クリック減る
- CSV を毎回加工しなくてよくなる
- チームメンバーへの共有がこの画面だけで終わる
価値が抽象的なままだと、ユーザーは 便利そう とは思っても、今日試す理由までは持てません。
3. 告知と利用開始のあいだに壁がある
新機能の案内を見て興味を持っても、
- 権限設定が必要
- 初期設定が必要
- 連携設定が必要
- 対象画面まで数クリック離れている
- 使い方が分からず、結局元のやり方に戻る
という流れだと、最初の試用で離脱します。
Appcues のチェックリストやフォローアップ設計が強調しているのも、この 知ったあとに実際に試すまで を分断しないことです。
新機能は、知ってもらうだけでは足りず、最初の成功体験まで連れていく必要があります。
導線不足で起きやすい5つの詰まり
1. 必要な画面に機能が出ていない
いちばん多いのはこれです。
ユーザーがその機能を欲しくなる文脈で見えていないと、存在していても使われません。
たとえば、
- 一覧の絞り込み改善なのに、案内はホーム画面にしか出ていない
- エクスポート機能なのに、データを見ている画面から遠い
- 下書き共有機能なのに、共有したくなる瞬間に入口が見えない
という状態です。
これは 機能がない のではなく 見つからない 状態です。
Nielsen Norman Group が長年扱っている discoverability の問題もここに近く、存在する機能でも気づかれなければ使われません。
2. 誰向けかが曖昧
新機能を全員に同じように見せると、必要な人には薄く、不要な人にはノイズになります。
使われる機能は、対象ユーザーがかなり明確です。
- 管理者向け
- 請求担当向け
- 初回設定が済んだチーム向け
- 既存機能を一定回数使った人向け
Pendo や Appcues の案内でも、機能採用は全体平均だけでなく、対象セグメント単位で見る前提になっています。
全体で使われていない ではなく、使うべき人に届いているか を見ないと判断がずれます。
3. 最初の一歩が重い
機能そのものは良くても、最初の利用開始に必要な手順が多いと使われません。
- 事前設定が3つある
- 権限申請が必要
- サンプルデータがない
- 最初に何を押せば成功なのか分からない
新機能で大事なのは、全部を説明することより、最初の1回を完了できること です。
その意味で、新機能の導線は オンボーディング とかなり近いです。
4. 一度見逃すと再発見できない
トップのお知らせ欄に1回だけ出して終わり、という設計だと、見逃した人はあとで辿れません。
これでは 告知したのに使われない が起きやすくなります。
使われる機能は、あとからでも見つけ直せます。
- 関連画面に常設の入口がある
- ヘルプやナレッジベースから辿れる
- 設定画面やメニュー名が自然で検索しやすい
- 対象ページで軽い再案内が出る
告知は瞬間的でも、導線は継続的であるべきです。
5. 使った後の良し悪しが分からない
一度触っても、できたのか 前より楽なのか が分からないと定着しません。
新機能が定着しないサービスでは、最初の利用後に
- 成功表示が弱い
- 次に何をすればいいか分からない
- 元の手順との差が見えない
- 失敗時の案内が弱く、すぐ諦める
ということが起きがちです。
ここでは エラーメッセージ設計 もかなり効きます。
新機能ほど操作ミスが出やすいので、最初の失敗で離脱させないことが重要です。
使われる新機能は、告知より先に何をやっているのか
1. 必要な瞬間にだけ見せている
全員に一斉通知するより、必要な画面、必要な役割、必要な条件に絞って出した方が使われやすいです。
2. 価値を短く具体的に言っている
機能名ではなく、何が楽になるか を一言で示しています。
3. 最初の1回を設計している
説明文を増やすより、1回成功できる最短ルートを作っています。
4. 使わなかった人への追いかけ方がある
Appcues のフォローアップ設計でも、告知を見たかだけでなく、実際に試したかで次の案内を変える考え方が出てきます。
つまり 告知したら終わり ではなく、未利用者にどう戻すか まで設計します。
5. 見る数字が「閲覧数」だけではない
見るべきなのは、告知の表示回数だけではありません。
- 対象ユーザーのうち、機能の入口まで来た割合
- 入口を押した割合
- 最初の完了まで進んだ割合
- 1回きりではなく、再利用された割合
- 役割やプランごとの差
このあたりを見ないと、見られたけど使われない のか、そもそも見つかっていない のかが分かりません。
数字の置き方は、KPIとKGI の考え方にもつながります。
新機能が使われないとき、最初に見るべき順番
- その機能は、必要になる画面で見えるか
- 誰向けの機能かが明確か
- 最初の1回を終えるまでの手順が重すぎないか
- 一度見逃した人があとで再発見できるか
- 閲覧数ではなく、利用開始と再利用まで見ているか
この順番で見ると、原因を 告知不足 にまとめすぎずに済みます。
まとめ
新機能を出しても使われない理由は、単に告知が弱いからではありません。
多くの場合は、見つからない 試しにくい 誰向けか分からない 一度見逃すと戻れない という導線の問題です。
だから、まず疑うべきなのはメール本数やバナー回数ではなく、その機能にたどり着き、最初の成功体験まで進める設計になっているか です。
新機能は、作っただけでは価値になりません。
必要な人が、必要な瞬間に、迷わず試せて、使い続けられるところまで設計してはじめて、機能として立ち上がります。
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- オンボーディングとは?初回利用で迷わせない設計の考え方
- UI設計とは?見た目だけでなく使いやすさを決める考え方
- ナレッジベースとは?FAQや社内Wikiと何が違うのか
- エラーメッセージ設計とは?ユーザーを止めすぎずに伝える考え方
- KPIとは?KGIとの違いと、Web運用で何を追うべきか
参考リンク
- Intercom Help: Product Tours explained
- Intercom Help: Best practices for using Product Tours
- Appcues Docs: What are Checklists?
- Appcues Docs: Create a Workflow to follow up after a feature announcement
- Pendo Help Center: Measure overall feature adoption